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「たとへば君」河野裕子・永田和宏(文藝春秋) [本(大切な人をなくしたあなたへ)]

「歌に私はなくだらう」を読んでさらに永田・河野ご夫妻に興味を持ち、読んでみました。
副題は「四十年の恋歌」

たとへば君―四十年の恋歌

たとへば君―四十年の恋歌

  • 作者: 河野 裕子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 単行本






帯に河野さんのお写真が使われていますが、とってもお綺麗な方です。しっとりとした美しさ。

副題のとおり、大学生の時に短歌を通して出会ってから、河野さんの死までの40年間にお二人が詠んだ歌と、歌と同時期に書かれた河野さんのエッセイが掲載されています。そして最初と最後に永田さんの文章。

まさに相聞歌。

「作品」というかたちになっていますが、お互いへの気持ちがストレートにリアルタイムに伝わってくる、そういう関係ってある意味しんどいかもなと思いました。そういう歌を介した夫婦関係についての記述は「歌に私は泣くだらう」にも綴られていましたが・・・。
でも口には出さない本心が、歌というかたちで相手に伝わる(相手だけではなく、著名な歌人であるおふたりの歌は歌壇にも広く伝わるわけですが・・・)、残酷でもあり幸せでもありというところでしょうか。

河野さんは死の前日まで歌を作り続けたそうです。
枕元の紙という紙に書き付けられた、薄い筆跡の歌。そして口からこぼれてくる言葉もふと気がつくとそれは歌で、あわてて家族が書き留める、そうして数々の、残して行く愛しい人、愛しい世界、そしてもう自分が歌を詠めなくなる無念、そうした思いが歌のかたちで残されて行くのです。

その姿は、やはり歌という芸術に人生を捧げた人の修羅であり、救いでもあったのでしょうか。

最後に最近作った歌として紹介されている永田さんの歌。

「わたくしは死んではいけないわたくしが死ぬときあなたがほんたうに死ぬ」
P238

亡くなった人は残された人の中で生き続ける。
愛する人を失って残された人はやはり同じことを思うのだと、涙が出ました。

辛くてたまらない日、この歌が支えになってくれるような気がします。





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