「ナイルパーチの女子会」柚木麻子(文藝春秋) [本]
猛暑が続きますね。エアコン入れても全然涼しくならないので、壊れてしまったのかと焦りましたが、エアコンからガンガンい冷風は吹き出してますので、暑さに処理能力が追いつかないみたい。このマンションに越してきて9年目。こんな夏は初めてです。
さて、読みましたよ、話題作。先日の直木賞の候補にもなってました。
丸の内の大手商社に勤めるやり手のキャリアウーマン・志村栄利子(30歳)。実家から早朝出勤をし、日々ハードな仕事に勤しむ彼女の密やかな楽しみは、同い年の人気主婦ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むこと。決して焦らない「おひょう」独特の価値観と切り口で記される文章に、栄利子は癒されるのだ。その「おひょう」こと丸尾翔子は、スーパーの店長の夫と二人で気ままに暮らしているが、実は家族を捨て出て行った母親と、実家で傲慢なほど「自分からは何もしない」でいる父親について深い屈託を抱えていた。
偶然にも近所に住んでいた栄利子と翔子はある日カフェで出会う。同性の友達がいないという共通のコンプレックスもあって、二
人は急速に親しくなってゆく。ブロガーと愛読者……そこから理想の友人関係が始まるように互いに思えたが、翔子が数日間ブログの更新をしなかったことが原因で、二人の関係は思わぬ方向へ進んでゆく……。女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。
第28回山本周五郎賞受賞作。
立場の違う女同士の友情の物語、といえばぱっと角田さんの「対岸の彼女」などが思い出されますが、いやいや、全然ちがうーーー。とにかく読んでいて疲れました。
あらすじは上記引用のとおりなのですが、なんともかんとも、女同士の関係の息苦しさ、女同士の関係からはじき出され男社会に同化しようとしてもそれもならず、といった栄利子のどうしようもなさが、読んでいてしんどくなります。でもそれは女性同士の絶妙な間を保てないからというよりも人間関係全般においてうまく他人との距離が取れてないだけ。それを「女友達」というフレームに入れて物語を語ってしまったところにちょっと強引さというか、読んでて疲れるようなところが出てしまったんじゃないかな、などと思いました。
栄利子と翔子の1対1の関係だけでなく、栄利子と高校生の時に関係が破綻した幼馴染みの存在や、派遣社員の真織といった栄利子がうまく付き合えない他の女たちもみんな極端で、普通のバランスとれた人物が登場しないのも疲れる原因か??
わたしがありえないでしょ、と思ったのが真織。23歳の彼女は栄利子の同期と付き合っていてできちゃった婚まで持ち込んだ女。従順な可愛い女を演じているけど、途中で仮面を剥がすようにその本音を会社で吐きまくる。超ヤンキー。結婚まで決めて急に男に対して高圧的になるその姿も怖い。だって、いくら自分が大嫌いな栄利子と婚約者が浮気したからって、会社の給湯室で芋けんぴを男の手の甲にブッ差しますか?!
っていうか、そこまで芋けんぴ鋭利じゃないでしょ。あまりの出来事にページをめくる手がとまりましたw
栄利子が勤める会社は日本を代表する商社、という設定なのだから商事とか物産、がモデルなわけですよね。いやいや、ああいう会社に猫をかぶった派遣社員とはいえ、あそこまでガラの悪い元ヤンが潜り込むなんてあり得ないでしょー、と思うのはわたしの思い込みでしょうか。
ということで、なんだか盛りだくさんすぎてよくわからない作品に仕上がってました。
とにかく栄利子がフツーの高学歴キャリアじゃなさすぎた・・・。
この設定なくてもよかったかも、ってくらいだと思います。中堅どころの普通の会社員でも全然成立してたんじゃないかなぁ。。。
ちなみにナイルパーチとは南米に生息する白身の淡水魚。獰猛なためアメリカなどに輸出されて、生態系をこわしまくった魚だそうです。ちなみに90年代には「白身魚」として本名を隠して日本でも食べられていたらしい。このナイルパーチを栄利子が自分自身に例えてみた、ということみたい。
カオリさま こんにちは!
本当に今年の夏は異常の暑さですよね~
我が家もマンション暮らし14年目ですが、
エアコン使用しないと眠れない夜がこんなに
あるのって初めてです。
さて、ナイルパーチの女子会・・・
私も先月読んだところです。
なんだか後味の悪いお話でした。
最初の方はまだよかったのですけど、後半は
何が何だか・・・展開が不明でした。
あの派遣社員の設定、ほんとおかしいですよね(^^;
商社という職場を知らないのでなんだか怖いところだ
と思ってしまいました(^^;
by yuki (2015-08-07 18:59)
ものすごく興味を持ちました。
こちらの記事を、2回読み直させていただいた位です。
ひとつは、「ブロガーとその読者」という関係について。
これは、ここ数年、私がずっと考えていたことでもありました。
また、「女同士の友情について」。
先日カオリさんが紹介してくだった乃波アサの「いつか日のあたる場所で」を拝読した時も感じたのですが、
"同じ"であることをよりどころとして結ばれた関係は、実はかなり難しいように思いました。
"違っている"ことを尊重し、それを踏まえた関係が、実は良いのではないかなあ・・などと考えました。
これは男女にも言えるように思いました。
後は、会社での江利子ですね。
彼女がそこで何を思い、どんな風に働いているのか、これもとても気になりました。
タイトルは、なるほどそういうことでしたか。
いろいろと考えていることにちょうど当てはまるようで、大変興味をひかれました。
by Sho (2015-08-08 04:23)
>yukiさま
少し暑さもやわらいだかと思ってましたが、いやいやまだまだですねー。でも我が家のエアコンはまた働くようになってきました。
この作品、yukiさんも読まれましたか!
なんか、ほんとに途中から痛々しいというか、読んでていやーな気分になる作品でしたね。
あんな職場、ほんとに嫌だーとわたしも思いました(笑)
>Shoさま
こんな雑なレビューを2回も読んでいただいたなんて、恐縮です。
確かにわたしも「同じ」だけがよりどころの関係は破綻しやすいように思います。学生時代には仲のよかった仲間と、卒業して5年10年経って生活環境が変わると疎遠になりがちなのも同じですよね。
個人でも自分のライフスタイルをブログに紹介することで憧れの存在となったりそれを商売にする人もたくさんいますが、たぶん、読者との距離の取り方は難しいのではないかと思います。特に憧れ等を抱かせやすい系のブログはいろいろ大変そうです。
機会があれば読んでみてください。
by カオリ (2015-08-12 10:59)