「怒り」(映画館で) [映画]
雨は止みましたが、蒸し暑いですね。でもまだまだ秋雨前線は活動中・・・。秋晴れが待ち遠しいです。
さて、先週から上映が始まった「怒り」
3連休にさっそく観てきたのですが、作品のパワーに圧倒されてしまい、まだまだ興奮気味です。
一緒に観た夫も同じような感じで、何かしら毎日感想を語りあってます。
(夫はあんまりフィクションに対して興味がない派なので、こういうの珍しいのですよ)
吉田修一の原作を映画化した「悪人」で国内外で高い評価を得た李相日監督が、再び吉田原作の小説を映画化した群像ミステリードラマ。名実ともに日本を代表する名優・渡辺謙を主演に、森山未來、松山ケンイチ、広瀬すず、綾野剛、宮崎あおい、妻夫木聡と日本映画界トップクラスの俳優たちが共演。犯人未逮捕の殺人事件から1年後、千葉、東京、沖縄という3つの場所に、それぞれ前歴不詳の男が現れたことから巻き起こるドラマを描いた。東京・八王子で起こった残忍な殺人事件。犯人は現場に「怒」という血文字を残し、顔を整形してどこかへ逃亡した。それから1年後、千葉の漁港で暮らす洋平と娘の愛子の前に田代という青年が現れ、東京で大手企業に勤める優馬は街で直人という青年と知り合い、親の事情で沖縄に転校してきた女子高生・泉は、無人島で田中という男と遭遇するが……。(映画.comより)
原作はわりとすぐ読んでまして(←レビューはこちら)、「怒り」というタイトルに象徴されるなんというか、圧倒的な迫力に気圧されてしまったので、映画化されると聞いて、あの小説をどんなふうに映画にするんだろうか?と楽しみにしていたのです。千葉、東京、沖縄という離れた場所で進む物語は最後までまったく接点を持つことなく終わりますし・・・。
よくこういう作品だと、一つひとつの物語が少しずつ登場人物が重なっていて、というのがありがちですが、それもないし。
しかし、見事にそれぞれの物語が独立したまま、一つの作品にまとまっていて、脚本も担当した李監督すごいな、と単純に心の中で拍手。
一つひとつのシーンが息つく間もなく重ねられていき、その度にどんどん登場人物たちの気持ちが追い詰められていくその様は観ていて息苦しいほどでした。
カットのつなぎ方っていうんでしょうか、それが秀逸だなと。
殺人事件の犯人は3人のうち誰なのか。映画だとモンタージュ写真がリアルに出てくるんですが、それが千葉編のマツケン(松山ケンイチ)とかなーり似ていて、あれ?わたしの記憶では千葉の男は関係なかったはずなんだけど・・・とぞわぞわしてくるし。
犯人につながる伏線はいろいろあって、しかも殺人事件を起こしそうな雰囲気の男は一人しかおらず、まぁ犯人は確定なわけですが、小説をすでに読んでいて結末を知っているはずのわたしでしたが、実は結末がすっぱりと記憶になく、ラストはかなりの衝撃を受けました。・・・え、そんな話だったっけ?みたいな。
わたしの中では犯人は闇の中のまま小説も終わっていたような気がしたんですが、それは記憶違いだったようです。
自分の記憶があやふやなのか、映画用の結末が小説とは別なのか確認したくて、映画を観た翌日、本屋さんで文庫本を買ってきて再読しました。
・・・ハイ、映画も原作も結末は同じでした。もちろん細かいところは違うけど。
「怒り」ってなんなのか、ってもういろんなところで書かれているので、それについては割愛しますが、「怒り」って書きなぐった本人の怒りの気持ちだけが、中に浮いたまま。そこが理不尽で救いがない。
そういう作品中にただよう諦観が一歩間違うと暴力的な怒りに変化してしまうのかなぁと、映画を観た後の原作再読で感じました。
ちなみにこの作品、豪華な出演者でも話題ですが、日本を代表する若手俳優達の演技はさすがでした。
もちろんケン・ワタナベもおじさんルックに身を包み、漁港で働くくたびれた中年男を熱演してました(主演、ってことになってるけどそういう感じじゃないんですよね)
綾野剛って、いつも目がギラギラしてるイメージだったんだけど、今回はイメージ変わりました。居場所がない心細さというか糸の切れた凧のような頼りなさ。そしてなんか顔がむくんでいるような感じだったんだけど、あれも役作りだったのかも。
宮崎あおいも7キロ体重増やして撮影したらしいんだけど、残念ながら7キロ増量してもまだ細い。漁港の冴えないちょっとトロそうな女の子には見えなかったけど、大きな髪飾りをつけた不思議ちゃんな雰囲気を出していたのはさすがでした。
ひとりひとりの演技について書き始めるとキリがないのでこのへんで。
原作再読したので、映画に合わせて発売された文庫もこれから読みます!
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