「記憶の渚にて」白石一文(角川書店) [本]
ふー、今日も1日寒いですね。でも一歩も外に出ていないので、この記事を書き終えたら買い物にいってこようと思います。
白石一文の新刊・・・といっても去年の6月ですね。図書館の順番がようやくまわってきました。
相変わらずの白石節炸裂・・・といってもいつもほどではなかったかしら。
ミステリー的な展開で、結構楽しめました。
国際的に著名な作家だった兄が謎の死を遂げた。古賀純一は兄の遺品の中から謎の遺書と『ターナーの心』と題された随筆を発見する。我が家の歴史を綴ったその文章は、記憶とは大きく食い違うデタラメばかり。偽装された文章は兄の死となにか繋がりがあるのか?兄の死の真相に迫る古賀を待つ、謎、謎、謎―。日本からイギリスへ。海を跨ぎ、一五〇年の時を越える一族の歴史。そのすべてが一つの像を結ぶとき、予想だにしない圧巻のラストが立ち現れる!この不確かな世界を生き抜く力となる、最新傑作長篇。(「Bookデータベース」より)
3部構成なのですが、1部で主人公なんだと思っていた古賀純一があっけなく殺されてしまい、「え???」な展開に。
とある新興宗教の教団と古賀兄弟の「記憶」がリンクしていき、古賀兄(有名小説家、自殺)の義理の甥で長じて同じく小説家となった白崎東也が謎解きをしていく・・・という展開なのですが、ミステリーちっくではありますが、なにせ白石さんですから、やっぱりミステリーではないのですよ。
え?そんなオチ??みたいなラストシーンだし。
なんといってもタイトルである「記憶の渚」がキーなんでしょうね。結局、現実で起きた事柄は、1秒でも経過するとそれはその場にいた一人ひとりの「記憶」となり、少しずつ食い違っていきますよね。
そしてそれが、受け継がれていく。
実は、遺伝子を受け継ぐというよりも、記憶を受け継いでいくことがヒトという種にとっては重要なことなのではないかというようなことなのかなぁ。
キーパーソンである古賀兄(ペンネーム:手塚迅)の残したメッセージを、血の繋がった弟ではなく、元妻の甥という血縁のない白崎が紐解いていくという展開もそこにリンクしているのでしょうね。
Amazonのレビューは両極端で、星5つが5人、星1つが4人。票が割れてますね。まぁそうだろうなぁ。これがまた新聞小説だったというのも驚きですよ。こんなマニアックな作品がねぇ。。。
読んでいて特段楽しくもないのに、新刊が出たら必ず読んでしまう白石作品。
やっぱり不思議な魅力があるってことなんでしょうね。
↓ヒトの記憶についての本。これ、テーマがリンクしてそうなので読んでみたいです。
脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議
- 作者: ジュリア・ショウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/12/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)