SSブログ

「編集者という病い」見城徹(集英社文庫) [本]

元角川書店の名物編集者で、現幻冬舎社長の見城さんが自らの生き様を見つめた1冊。



編集者という病い (集英社文庫)

編集者という病い (集英社文庫)

  • 作者: 見城 徹
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/03/19
  • メディア: 文庫



幼い頃からのコンプレックスをバネに、表現者(見城氏の仕事相手はもちろん作家が中心だけど、ミュージシャンや俳優といった人々にもペンを取らせてきた)たちの懐に棲みつき、彼らの弱いところ、触れられたくないところをえぐり出す、そんな作業の連続。その一連の関係を何百人もの表現者達と絶え間なく続けているというのだから、すごい。
ミュージシャンの尾崎豊との関係はその際たるもの、正直死んでくれてほっとした、という1行には地獄ともいえるような時を破滅型の早熟な天才と過ごした時間の壮絶さが伝わってきます。

本能の教えるままに、次々と才能を発掘し、ヒットを飛ばし続ける姿には「この人は編集者になるために生まれてきたのか」と思ってしまうのですが、それを支える氏の努力たるやすさまじい。これぞという才能を見つけてから10年も仕事をせずにそのベストの切り札をいつ切るかうかがい続けていることもあるというのですから。それが石原慎太郎の「弟」であり、郷ひろみの「ダディ」誕生の秘話なのです。

幻冬舎のあざといまでの広告のコピーも氏が自身で考えたものも多いとか。ご本人も言う通り神経の休まる閑もないでしょうし(慢性的に不眠症、心臓病持ち、耳鳴りが数年なったまま、など)、家族や周りにいる人達も大変だと思う。でも、それを許し、受け入れてしまうような魅力をもった人なんだろうなぁとも思います。絶縁してしまった人も数知れず、というのも頷けます・・・。

残念だったのは序章とあとがきのみ書き下ろしで、あとは過去の原稿やインタビューなどを収録し直したものだということ。読んでいて重複する話があったり、とご本人もあとがきでその点には触れていますが、やっぱり少し読みづらかったかな。でも、その時点、その時点でのリアルな話がてんこもりで、それはそれでありか、とも思いました。20年も前の話なんて、思い出して書いているとやっぱり「自分のアタマのなかでのストーリー」に転化してしまいますから。

いつも何かに怯えながら、でも自分を突き動かす衝動に従って、用意周到にことを進めて行く、磊落放胆に見えながら繊細な男の物語です。

人気ブログランキングへ
↑クリックお願いします♪

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 2

Sho

この方のことをはじめて知ったのは、四半世紀くらい前でしょうか。村上龍とか、つかこうへいとか、当時油の乗った作家たちのエッセイによく登場してたんですね。
この人は、自分の担当した作家との関係を「内臓をぶつけ合うような」と、形容していらっしゃいますね。
それすごくわかるような気がします。
とっても気になる人です。
by Sho (2009-04-22 23:05) 

カオリ

>Shoさま
ワタシは確か林真理子のエッセイでした、この方を知ったのは。パワーに圧倒されます。それは必ずしも前向きなだけではなく負の力も内包していて、それだからこその人間的魅力なのかと・・・。
by カオリ (2009-04-24 20:03) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。