SSブログ

「ブタがいた教室」(DVD) [映画]

とあるブログで近所にペットとしてブタを飼っている家が何軒もある、との記事を見かけました。すごいなーと思っていたときにタイムリーにみてしまいました。

ブタがいた教室 (2枚組初回限定版) [DVD]

ブタがいた教室 (2枚組初回限定版) [DVD]

  • 出版社/メーカー: NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)
  • メディア: DVD


「先生はブタを育てて、食べようと思います」と、子豚を連れて教室に現れた星先生(妻夫木聡)に、ペット気分で大喜びする6年2組の子供達。彼らは子ブタにPちゃんという名前をつけ、世話して行きます。
生き物しかも、犬や猫でなく、ブタという家畜の世話をすることで、成長して行く子供達。花ちゃんという転校生の女の子が、なかなかクラスにとけ込めず、いつもPちゃんを取り囲む輪を少し離れたところからみていたのに、ある事件をきっかけにクラスの仲間となり、鎧のように身につけていた前の学校の制服を脱ぎ(母子家庭であることが描写されるから、離婚とか死別とかそういう事情で私立から公立に転校してきたんだなぁということがわかる)、クラスの一員となっていくストーリーがあったりしてそういうところでも感動的。

この作品は6年2組の子役達が主人公で、彼らの演技がとても重要なのですが、彼らの台本には台詞がなかったそうです。白紙の台本、つまり大人が考えた台詞ではなく、彼らは自分が感じた気持ちを自分が感じたままに話していたということ。もちろん、作品にしていくのですからある程度スタッフたちの交通整理があったんだろうとは思いますが、かなりリアルなできあがりになっていると思います。
この子役達にとってもある意味、人生のマイルストーンになる出来事だったんじゃないかと思います。

卒業間際になり「Pちゃんをどうするか」というテーマで学級会が行われるのですが、ほんとに切ないテーマです。彼らは彼らなりに、「Pちゃんにどう責任をとるのか」を考える。担任である星先生はじっと彼らをみつめる。でも星先生自身が迷っていることがその目線でわかります。

「命の長さは誰が決めるの?」
「(食べられるために生まれてきた)Pちゃんの役割は誰が決めたの?」

ズバズバと本質をついてくる子供達。

フィクションだから当たり前なのですが、通常だと「Pちゃんを食べちゃうなんてヒドイ!」という感情論に押し切られ、特に女子同士だとそれをもとにしたイジメが勃発したりして別の大問題が起きそうなものなのですが、これはきっと、Pちゃんを飼育するということに1年間一緒に取り組んできた仲間意識が、そういう行動を押さえ込ませたのなかとも思いました。

星先生を暖かく見守る校長先生(原田美枝子)がステキです。こんな校長先生がいる学校はいい学校だろうなぁと思います。子供達の意見がまっぷたつに割れ、どうしていいか決めかねていた星先生に、子供達の意見を尊重するのは大切だけど、どうするか決めるのは自分自身、と厳しいひとこと。ここで、星先生は教師としての決断を行う決心をします。

とても印象に残ったシーンがあって、お父さんが沖縄料理屋さんをやっている男の子がいて、この子はいつも仕込みの手伝いをしています。で、ある日お父さんが「父ちゃんがブタをさばかなくてもいいのか?」と聞いてきます。言葉をなくす男の子。で、お父さんが「父ちゃんも子供の頃、育てていたブタを殺された。そのときはオニだと思ったけど、オニが作る料理はものすごくうまかった。ブタは残った骨まで肥料として畑にまく。無駄なところは何もない。命に無駄なんてないんだ」というようなことを言うんですね。
自分が生きるために必要な無数の「いのち」
「いのち」を実感するには何が必要なのか。そんなことを考えさせられる作品でした。

でも、実際にもやってしまったことのようなので、作品作りの上ではどうしようもないことなのかもしれませんが名前をつけてしまったのはいかがなものかと。「家畜」に名前をつけてしまった時に、それはペットになってしまいます。かつての農村では家畜を飼ってそれをつぶして食べるとうことは普通に行われていたと思いますが、名前はつけていなかったはず。情がうつるのは当たり前です。先生は子供達が「Pちゃんと名前をつけた」と言っても断固反対し、ブタと呼び続けるべきだったのでしょう。そうしないと、子供達にとってさらに過酷な決断を迫ることになりますから・・・。

この作品、実際に同じことをした大阪の先生の手記をもとにしているそうです。

人気ブログランキングへ
↑クリックお願いします♪
nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 4

kumawow

観てみたくもあり、苦しくもあり、避けていたのですが、かおりさんは正面から観られたのですね。

確かに名前をつけた時点で、つらいかも。

以前、フランス人から、家で「飼っていた」うさぎがいきなり食卓にあがり、子供のころにショックを覚えたという話を聞いたことがあります。
by kumawow (2009-09-10 15:18) 

カオリ

>kumawowさま
ぜひ観て感想きかせてくださいね〜。子役達が生き生きとしていてよかったですよ。

うちの両親は実家が田舎ですから、農家じゃなくても、鶏を飼い、卵を売って現金収入にし、卵を産まなくなったら最後はしめてごちそうとして食べる、というのはいたって普通のことのようでした。
by カオリ (2009-09-11 17:24) 

Sho

このもとになったエピソードが紹介されたとき、雑誌で読んだ記憶があります。
私は「愛していたものが死んでしまうというのが、どれほど悲しいことか」「人は必ず何かの命を終わらせて、それを食べている」とか、そういうことを実感するにはいい授業だと感じていた気がします。
ただ、確かに名前をつけていわば家族の一員とする― となると、子どもたちには強烈すぎる体験だったかもしれないですね。
でもどういう形であれ、子どものうちに「生きているものが死ぬこと」を体験させるのは大事なことだと思います。
by Sho (2009-09-13 03:13) 

カオリ

>Shoさま
今の子供達にはなかなか「命」を実感する機会って少ないのかもしれませんね。近所のおじいさんが亡くなったり、自分でつかまえてきた蝶やトンボがすぐ死んじゃったり。そんなことで、子供の頃からぼんやりと「命あるものは死ぬんだ」と感じていた気がします。
あとは、生きた魚や蟹やら海老やらを日常的に食べていたので、命をもらっていること、「ありがとう」という気持ちをもって食べること、を身を以て学んだ気がします。
都会ではなかなか難しいですね。nice!ありがとうございます。
by カオリ (2009-09-14 18:56) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。