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「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ(早川epi文庫) [本]

初カズオ・イシグロ。長崎出身ということで、「日の名残り」がブッカー賞を受賞したときから気になっていたのですが、なにしろ翻訳ものなので敬遠していたのでした。でも、今回「わたしを離さないで」の映画の予告編を観て、すごく興味をもった次第。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: カズオ・イシグロ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/08/22
  • メディア: 文庫
なんとも不思議な手触りの作品でした。熱烈なファンがたくさんいることも納得。半分くらいまで、文章のリズムに乗り切れなくて辛かったのだけど、後半になると物語自体のテンポも上がるので気にならなくなってきました。

ある意味、SF?な設定なのですが、20世紀後半のイギリスが舞台。この物語世界には「介護人」と「提供者」という人たちが存在し、主人公のキャシー・Hは優秀な介護人。介護人は提供者の介護をするのが仕事なのだけど、いずれは提供者の立場にならなくてはいけない運命。彼らは「施設」と呼ばれる場所で、両親も知らず、提供者になるための教育を受けて育っています。その謎は物語のわりと最初の方でわかるので、あまりその謎解きは問題ではありません。

絶対に逆らえない運命をすんなりと受け入れて短い生を生きる、そんなことができるのか、というのは読みながらの疑問。でも、外の世界を知らずに育ち、他の選択肢が全く考えられないほど洗脳状態であればそれも可能なのかもしれませんね。

そうした中での最後のキャシーと恋人のトミーの別れに繋がるエピソードは胸が潰れるようでした。その世界を「正しい」と考える彼らを利用する側の人間と、その作られた世界の中がすべての介護人および提供者たち。読み終えた後、胸がざわざわと震えました。命そのものの問題よりも、人が育つ過程での教育ってどうあるべきなのかそういうことを考えさせられる作品。

映画も今まさに上映中です。これは映画館に観に行きたいわ。荒涼としたイギリスの風景で繰り広げられる命のドラマを見たいです。

映画オフィシャルサイト↓ *音が出ます!


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