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「Because I am a Girl わたしは女の子だから」角田光代訳(英治出版) [本]

普段、気にはなるけどなんとなく意識をしないようにしていること。知ってしまうと自分が苦しくなってしまうから・・・。それは自分が同じ女性であるからおそ感じる拒否反応。この作品を訳した角田さんが前書きの「わたしも女(の子)だからこそ」を読んで、自分が長年感じていたもやもやと同じようなことが書いてあってそれだけで心をつかまれました。

Because I am a Girl――わたしは女の子だから

Because I am a Girl――わたしは女の子だから

  • 作者: ジョアン・ハリス
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2012/11/20
  • メディア: 単行本





国際NGOのプラン。途上国の子供たちへの自立支援を主に行っている団体です。そのプランが手がけているプロジェクトのひとつが「Because I am a Girl」
70年にわたり900万人の子供の支援をしてきた経験から女の子への投資が貧困の連鎖を断つという見解に至り、立ち上げられたプロジェクだそうです。

教育を受けていない幼い少女が低体重児を産んで母親になり、その子もまた教育を受けられず健康状態もよくないまま育つ。そういう悪循環を断ち切るために、私たちは「Because I am a Girl」キャンペーンを開始した。

この作品はヨーロッパの作家やジャーナリストが世界の貧困地域を訪れ現地の少女達にインタビューした内容をもとに自由に、作者ならではのアプローチで女性と貧困の問題について切り込んでいます。連綿と続いてきた文化は変えられるのか、旅人でしかない自分の存在に時には無力感を感じながら、でも「教育」の力を信じて物語を紡いでいきます。

この作品集を日本語に訳した角田さんも以前、プランの招きでマリとインドを訪ねてそのとき感じた衝撃と希望を胸にこの状況をなんとかしたい、という一心で本業ではない翻訳の仕事を引き受けた、とあります。

この作品集に収められたなかでマリー・フィリップスさんという作家が書いたルポルタージュは、彼女が受けた衝撃がそのまま書き記されていて、他の小説仕立ての作品より、より心に響きます。そしてそのルポに対するウガンダのプラン事務局長からの返答がまた心を打ちます。マリーの感情的なルポに対し、冷静に時には優しく本心を交えながらプランの取り組みを説明する・・・その真摯な姿勢に感動しました。論理的な文章にもかかわらず。事務局長は女性でネパールの出身。彼女自身が乗り越えてきたたくさんの壁を想像するだけで頭が下がります。

まとまりのない感想となってしまいましたが、「女の子だから」という一言でこんなに辛い境遇に甘んじるしかない女の子達がまだまだこの地球上にこんなにたくさんいること。それを「知る」ことは安穏として恵まれた毎日を送るわたしたちにはある意味辛い作業でもあります。わたしも何か出来ているのかといわれると、何も。と答えるしかありません。でも教育が貧困からの脱出への最大の鍵となるように、わたしたちもまず「知る」ことから始めないと何も始まらないのです。

願わくば。この本の第2弾は現地の作家の筆によるものになりますように。教育を受けた女の子達が物語を紡げるようになれば。そんなリアルな物語を読んでみたいと切に思います。


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