「愛に乱暴」吉田修一(新潮社) [本]
新聞連載時はタイトルが「愛の乱暴」だったそうです。確かに「愛に乱暴」の方が、しっくりきます。
でもやっぱり「それ、どういうこと??」って思ってつい手にとってしまいそうなタイトルです。
初瀬桃子というおそらく40歳前後の主婦が主人公。夫の真守と、夫の両親と同じ敷地に建つ平屋の離れで生活している。週に1度、デパートのカルチャースクールで手作り石けんの講座を受け持つ。おそらく住んでいるところは閑静な住宅街で余裕のある暮らしがうかがえます。
各章が「初瀬さん」という男性と不倫の恋をしている若い女性の日記で始まり、初瀬桃子の視点でストーリーが進み、そして桃子の日記で締めくくられます。
これとってもトリッキーな構成になっていて、それが読み進めるうちに「おおっ!!」と思わせられる展開となっていきますので、これ以上は書けないのが残念。
わたし、完全に騙されてました。
「狂気」って何なんだろうって読みながら思いました。
桃子の執着はおそらく真守への愛からではないでしょう。
でもはたからみれば「違うよね」って思っても、本人が「愛してるからだ」って思っていればそうなんだとも思うし。あるひとつの場面もその場面にいたそれぞれの視点を通した時点で全く違う出来事になってしまうかもしれないし。
そしてやっぱり「ありがとう」ってミラクルワードだなと感じさせられたラストシーン。
やっぱり桃子には真守への執着、というか「山の手で暮らす主婦という生活」への執着は断ち切って新しい人生を歩んで欲しいなと切に願ったのでした。
しかし、真守という男、いけ好かないです。そしていい年した息子を「マーくん」と呼んで溺愛する姑にもげんなり。
2014-01-24 19:15
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本屋さんにこの方の「怒り」?、がたくさん積んであり気になっていました。
こちらも気になります。
ずいぶん前ですが、この方の「東京湾景」がドラマ化されたとき、あまりにひどくて、「この原作者は、もう自分の作品の映像化を絶対許可しなくなっちゃうんじゃないだろうか・・」と、ひそかに心配したことがありました。
杞憂に終わってよかったです。
by Sho (2014-01-26 15:37)
>Shoさま
「東京湾景」は嫌な予感がしてドラマは観なかったのですが、ひどい出来だったんですね・・・。「悪人」が素晴らしい映画になってほんとによかったです。
「怒り」はわたしも今日、本屋さんでチェックしてきました。かなりシリアスな犯罪もののようですね。「愛に乱暴」も機会があれば読んでみてください。
by カオリ (2014-01-27 21:49)