「讃歌」篠田節子(朝日文庫) [本]
爽やかなお天気が続いていて気持ちいいー。でも台風来るそうですが、関東にこの時期に接近するなんて珍しいですね。
テレビ制作会社に勤務する小野は、無名のヴィオラ奏者・柳原園子の過酷な半生を知り、番組を制作する。園子のCDは爆発的に売れるが、一方でバッシングも噴出する。彼女の音楽は本物か、それとも自分が作り上げた虚像に過ぎないのか? 小野が悩む中、園子が突然失踪しーーー。(裏表紙より)
あらー、どこかで聞いたような・・・?
でもこの作品、朝日新聞に連載されていたのは2004年。かの作曲家の騒動よりずっと前なんですね。
時間の制約があるなかで、制作した園子のドキュメンタリーにあったいくつかの穴。
しかし、ちょっとした確認ミスでは済まされないいくつかの問題があったのですが、それを主人公の小野が知るのは物語の最後。
時の人となった園子について、小野が勤務する会社内でも「何かおかしい」「彼女は意外としたたか」などと小野に異を唱えるのは女性上司だったり女性の部下だったり。
なんかやっぱりニオうらしいのですよ、女性にとっては彼女の語る自分ストーリーが。
謎解きがちょっと駆け足でやっつけ感があるのが残念ですが、ものすごく惹き付けられるストーリーでした。
マスコミが作り出す「スター」、挫折およびその後の闘病生活によって失ってしまったと思う「本来あるべき自分の姿」を取り戻そうともがく園子、キー局の下請として番組を制作する中で「話題作」を撮りたい小野。
他にも様々な登場人物の思惑が混じり合い、単なるミステリーではなく、深みのある物語になっていると思います。
こんなこと言っては失礼なのですが、篠田節子さんて、まだ書いていらしたのですね。私が不勉強なだけでした。
ああ、確かにあのS氏の件を思い出さずにはいられませんね。そして、カオリさんが書いてくださった紹介分からは、フジコ・ヘミング氏を思い出してしまいました。
ここ数日、小説家が書く「人の不幸」もしくは「不遇」というようなことを考えていました。
「女たちのジハード」は面白く読みましたが、このご本も興味を惹かれました。
by Sho (2015-05-11 21:37)
こういう話は芸能の世界では意外と多いのではないかという気がします。
根拠もなく、なんとなくなのですが。
by YAP (2015-05-12 08:12)
>Shoさま
この作品はもう10年前ですが、今もコンスタントに新刊出ているようです。わたしもあまり読んでないですが、新興宗教を扱った「仮想儀礼」は面白かったです。
人は音楽に何を求めるのか、正確なテクニックなのか情緒に訴えかけてくるものなのか、というある意味深い問いもあり、読み応えがありました。
>YAPさま
実際、こういう話で溢れているんでしょうね。オトナの事情ってヤツですね。nice!ありがとうございます。
by カオリ (2015-05-14 12:06)