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「狗賓童子の島」飯島和一(小学館) [本]

昨日の夜、5月から引き受けていた仕事が一旦終了しました〜。こんなに長期になると思っていなかったので、やり遂げた感がハンパありません。秋から再び同じシリーズの仕事をいただけるようなのですが、量はずいぶん減るみたい。なので、この達成感は今回ならでは、かな。
ということで、昨日はプライベートでもなかなかショックなことがあり、仕事の脱力感もあり、今日はお天気も悪いし、一日ダラダラ過ごす予定です!!

狗賓(ぐひん)童子の島

狗賓(ぐひん)童子の島

  • 作者: 飯嶋 和一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/01/28
  • メディア: 単行本





ずいぶん前に読んで感動した「出星前夜」の作者飯島和一さんの最新さくです。4年に1度しか新刊がでないので、一部でオリンピック作家とも呼ばれているらしいのですが、前作から6年ぶりの新作です。
やっぱり最後のページでじんわりきて涙がポロリ。

ちなみにタイトルの読みは「ぐひんどうじのしま」です。

時代は江戸末期。大阪で起きた大塩平八郎の乱に参加した河内の大庄屋西村履三郎の息子西村常太郎。
彼は父が蜂起した時わずか6歳。弟とともに叔父の家に預けられ15歳になった時に、改めて隠岐への遠流となった。
どう考えても当時6歳(しかも数えだから今の年齢だと5歳ですよねぇ)の子供に何の罪もないことは明白。それでも常太郎は子供時代に自らの宿命を受け入れ、隠岐の頭後という島に降り立った。ちなみに私も知らなかったのですが、隠岐の島とは4つの島の総称で、頭後はそのなかでも一番大きな島です。

しかし、常太郎の予想を反して、島後の人々は常太郎を暖かく迎えた。そもそも天皇や貴族等高貴な人が昔から流されてくる土地柄と、蜂起から10年以上経っても大塩平八郎の乱は日本各地の困窮する民の中で英雄として讃えられてきたらしいということ、大塩平八郎の高弟であり、庄屋というある意味農民のなかでも特権階級だった常太郎の父が村の人々のために自分の全てを捨て立ち上がったことは島の人々にも聞こえてきていた。そんな人の息子が島に流されてきたということで、彼らは常太郎を暖かく迎えたのでした。

常太郎はしばらくしてから村上良準という医者に預けられ、医師としての修行をはじめます。
そして村の娘お幾と結婚。コレラや麻疹の大流行などの対応に追われながらも、名医として島の人々から信頼されていきます。

この常太郎のある意味、諦観をともなった清々しさ、「置かれた場所で咲きなさい」的な私欲のなさ、は最初から最後まで変わりません。
島の人たちではありませんが、6歳で父の罪に連座させられて世界の果てのような島流しにあったのに、それをそのまま受け止め、その環境の中で背中を伸ばして生きている姿は清々しく、かくありたいと思わせられます。

そんな島の暮らしにも幕末の尊王攘夷から明治維新までの流れは無縁ではなく、もともと貧しい小島の暮らしと松江藩の圧政に不満を募らせていた人々の動きが荒々しくなり・・・

と、1846年に常太郎が島に流されてきてからの22年間が歴史の流れとともに描かれる大作。
総ページ数555ページです。
ある意味淡々と物語はすすみ、劇的なことは起こりません。
常太郎という外からやってきた人間の存在を通して、孤島の歴史を描いた作品、なのかな。
でもメインテーマは大塩平八郎の乱、らしいですよ。

ちなみに狗賓とは、島の山に住むという伝説の生き物で、その山への捧げものを持って行く役目を無事に果たすことができた15歳前後の若者は狗賓様に選ばれた者として狗賓童子と呼ばれ、島に厄災が起きた時にそれを救う存在となると言われています。
常太郎も島にやってきた翌年に山に登り、狗賓童子となりました。

なんて話が最初にあるものだから、どんなどんでん返しがあるのか、とドキドキしながら読んでたのですがね・・・。
先にも書いたとおり、ドラマティックな出来事は起こりません。

飯島さんは「出星前夜」と「黄金旅風」しか読んでないので、他の作品もそのうち読みたいと思います。




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