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「さよなら渓谷」吉田修一(新潮社) [本]

できるだけ本は買わずに図書館で済ませるようにしている最近のワタシ(読む量が時間があるがゆえにハンパじゃないので)ですが、手元に図書カードがあったので、ついつい買ってしまいました。吉田修一の最新刊。
「悪人」を超えた、との書評も目にしましたが、どうでしょう。やっぱり読後の充実感でいうと「悪人」かなぁ・・・。でももしかしたらそれは物語の長さの問題なのかも? 「さよなら渓谷」は2時間ほどで読了。

きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴きだす。取材に訪れた貴社が探り当てた、15年前の”ある事件”。長い歳月を経て、”被害者”と”加害者”を結びつけた残酷すぎる真実とはー (帯より)


物語は自分勝手でエゴむき出しの母親が我が子を川に落として殺害したという事件を取材する記者の視点で始まります。ああ、あの事件がモチーフなのね、と思いながらこの事件を軸に物語が進んでいくのかと思いきや、話は隣家の夫婦に移って行きます。
何かしら曰くありげなこの夫婦には、辛い過去があり、その「怒り」「罪悪感」によって結びついているはずだったこの夫婦、静かな日常の底に漂う、あきらめや倦怠感、そんなもので満たされた二人の関係がこの事件をきっかけに動き始める・・・。

「さよなら渓谷」、我が子殺しが行われたのも町にある渓谷、そして隣家の妻が夫婦の抱える負の感情を清算する決心をするきっかけとなったであろう会話を交わすのもこの渓谷。「さよなら」のひとことにはいろんな意味が含まれているのでしょう。

「・・・私が決めることなのよね」 渓流に突き出された素足を見つめたまま、かなこが呟く。(192ページ)


哀しいラストです。でも、それは次につながる希望、が少しはあるのかな。
10人の読者がいれば10通りの結末がある。
そんな物語なのかもしれません。



さよなら渓谷

さよなら渓谷

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本



悪人

悪人

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2007/04/06
  • メディア: 単行本



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コメント 2

むさし

こんにちは。
早速お邪魔しました^^
読書がご趣味なのですね!
by むさし (2008-07-02 18:50) 

カオリ

>むさしさま
さっそくありがとうございます!
また遊びに来てくださいませ〜。
by カオリ (2008-07-03 12:31) 

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