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「医師としてできることできなかったこと」細谷亮太(講談社+α文庫) [本(大切な人をなくしたあなたへ)]

もう何年も前に、たまたまNHKをつけたらNHKスペシャルかなにかの再放送で小児がんの現場で日々奮闘されているお医者様が登場されてました。それがこの本の著者の細谷医師。

聖路加病院の小児科部長で現在は副院長もされているようです。

医師としてできること できなかったこと 川の見える病院から (講談社プラスアルファ文庫)

医師としてできること できなかったこと 川の見える病院から (講談社プラスアルファ文庫)

  • 作者: 細谷 亮太
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/06/20
  • メディア: 文庫





小児がんを専門とする医師として過ごした数十年を振り返り、担当したこどもたちのことを優しく暖かい語り口で語られています。もちろん完治して元気に過ごして無事大人になったおこさんたちもたくさんいらっしゃるのでしょうが、やっぱり亡くなってしまうこどもたちをたくさん看取られてきた。細谷医師は「泣くことができなくなったら医師を辞めようと思っている」とインタビューでも語られています。


泣いて、そして次の患者さんには全力でむきあっていく。細谷医師は受け持ったおこさんのお通夜かお葬式には必ず参列されるそうです。お医者様のプロフェッショナリズムの持ち方としてはかなり特異なスタンスだとは思うのですが、残された家族にとってはそれはとても暖かく感謝の気持ちで満たされると思います。これも聖路加病院というキリスト教の理念を持つ病院にいらっしゃる医師だからこその姿勢かもしれませんが・・・。

なかなか医師や看護師さんのプロとしての顔ではない、ほんとの気持ちって伝わってこなくて、いろんなこと考えたりして落ち込んだりもしたんです、わたしも。でも息子とお別れした後、何度か病院に行くうちに、担当してくださっていた先生にばったり会ったとき「さっき、○○くんのこと××先生と話してたんですよ」と言ってもらえたり、担当の看護師さんから「○○くんとお別れしてからしばらくは休みの日には何にも手につかなくて毎回海を眺めていた」なんて話を聞かせてもらってようやく「ああ、息子もこんなに大事に思ってもらっていたんだな」と実感できて嬉しくなりました。こういう「気持ちを伝えてもらえる機会」があるとやっぱり遺族としてはちょっと救われます。息子が入院していた病院はグリーフケアも充実しているとは思いますが、それでもこんなふうに感じてしまうので、まだまだ病院の最後の対応に傷ついてる親御さんたち、たくさんいらっしゃるんじゃないかなと思います。

話が横道に逸れました。

小児がん(その多くは白血病)は30年ほど前までは日本ではほぼ助かることのない病だったそうです。それが医学の進歩でだいぶ助かるようになってきた。そこに至る道のりはとても険しいものだったと思います。
でも「だいぶ助かる」ということは助からない子もいるわけで・・・。

無理な願いだとはわかっていますが、ひとりでも多くのこどもたちの命が助かるようになりますようにと祈らずにはいられません。



細谷医師に12年間密着したドキュメンタリー映画があるようです。



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コメント 3

ken

いま小児がんの取材をすすめているところです。
先日小児がんのお子さんがいらっしゃるご家族の方とお話をさせて頂いたのですが、同じ年頃の子を持つ親として、その苦悩には計り知れないものがあると痛感しました。
この本も、映画も、観てみます。
by ken (2012-09-22 12:15) 

Sho

カオリさん

こんにちは。引き込まれるように、読ませていただきました。
こちらの記事を読ませていただき、いろいろなことを考えました。それを自分のブログに書かせていただきたいと思います。
その際に、カオリさんのブログで読ませていただいたこと、カオリさんのブログのお名前を出させていただいてもよろしいでしょうか?
もし「否」であれば、どうぞご遠慮なくその旨をお知らせください。
ご指示をお願いいたします。
by Sho (2012-09-22 14:57) 

カオリ

>kenさん
病気の子供を支えていかないといけないご家族のお気持ちはほんとに・・・。物心がつきはじめると余計につらいだろうと思います。
わたしも10月の上映会に行ってみようかと思ってます。

>Shoさま
もちろん記事にしていただいて大丈夫です。こちらもぜひご紹介ください。病気と戦っているこどもたちがいるということ、そしてそれを献身的に支えている医療従事者の方がいらっしゃるということ、たくさんの方に知っていただきたいです。
by カオリ (2012-09-24 21:32) 

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