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「対象喪失」小此木啓吾(中公新書) [本(大切な人をなくしたあなたへ)]

Amazonでこのての本を探すとわりと最初出てくる本です。1979年初刷。今でも増刷され読み続けられている定番のよう。の方に

対象喪失―悲しむということ (中公新書 (557))

対象喪失―悲しむということ (中公新書 (557))

  • 作者: 小此木 啓吾
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1979/11
  • メディア: 新書





著者が精神分析学で有名な精神科医師でフロイト研究の第一人者、というこでフロイトの「悲哀の仕事」をベースに死別や失恋、失業、受験の失敗などありとあらゆる「喪失」体験をどう乗り越えて行くかということについて語られています。
フロイトの夢診断の話を中心に取り上げられていること、もう30年以上前の出版のためたくさん登場する患者さんたちの例がなんとも古い・・・まずそこには違和感を感じました。なんかしっくりこないのよね。

でも失った対象への「喪の仕事」=きちんと悲しみと向き合いそれを乗り越える過程を経ること、の必要性については納得感あり。正直、息子を失ったことについては悲しみが別格過ぎてこの説をきちんと当てはめて考えることは出来なかったけど、過去の恋人との別れや以前の会社を辞めたことに関する心の痛みをこの本で書かれていることに当てはめて行くとなるほど納得。わたしは過去の出来事をかなーり引きずるタイプなので・・・。これはほんとに大きな気づきでした。

ちょっと長くなりますが、フロイトが定義した「悲哀の仕事」について書かれた部分を引用します。・・・と思ったのですが、あまりに長くて途中で断念。わたしなりに要約をば。

愛するものをなくした悲しみが続き、苦しくてたまらない → 「悲哀の仕事」とは対象とのかかわりを一つひとつ再現し、解決していく作業 → この作業をとおして、死を受け入れるということは失った対象(もしくは失う自分)を心から断念できるようになるということ

そしてここからが重要だと思うのですが・・・

しかし、それはあくまで「断念」なので失った対象を取り戻すこともできなければ悲哀の苦痛を感じなくなるということではない → 悲しみや苦痛は永久に残る → それをどうすることもできないのが人間の限界であり、現実である → 大切なのは、その悲しみを自然にいつも感じ、悲しいことを悲しいと感じることができる能力を身につけることである。(「対象喪失」P.155〜156)

たぶんわたしは「悲哀の仕事」をこれまでの人生においてうまくやってこれなかったんだなー。そしてフロイトによると多くの人はやはりうまくできず、悲哀の仕事を避けてとおるため時間が経ってから症状が噴出してしまう、と。これはフロイト自身の体験と精神分析の実績により導かれた考えだそうです。

精神分析という技法についてはまぁ諸説いろいろありますので、専門ではないわたしはこれ以上の深入りはやめておきますが、確かにこれは真理だと思います。

まだまだ「悲哀の仕事」は道半ば。もしかしたら一生かけてやっていくのかも。わたしはわたしのペースでいきたいと思います。



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コメント 2

Sho

興味深い御本の紹介、ありがとうございます。
> 大切なのは、その悲しみを自然にいつも感じ、悲しいことを悲しいと感じることができる能力を身につけることである
ここは、ああ・・そうだなあ・・と思いながら読ませていただきました。
悲しみを無くすことが、喪失体験の回復ではなく、
悲しみは悲しみとして、悲しみと共生していくというか・・上手く表現できませんが、納得できました。

 私事で恐縮ですが、物心ついた頃から心理学に興味がありました。二十年セッションを続けたカウンセラーは亡くなってしまいました。
現在も含め数年ごとに、抗うつ剤や安定剤を服用していますが、それはあくまで対処療法であり、根本的な心の問題は、心理学レベルでなければほどけていかないと思っています。
これからある意味ライフワークのように、自分自身の心と向き合うため、心理学を学んでいこうかと思っていました。
ちょうどそういう時期にカオリさんの記事を拝読でき、いろいろと考えることができました。
私自身の「喪の仕事」もきっと一生続くのだと思います。でもそれは、旅立った大事な人と常に関わっているようで、暖かいものも感じます。
長々と失礼しました。
今日は木枯らし一番が吹くかもしれないそうです。
どうぞ暖かくして、ご自愛ください。
by Sho (2012-11-02 07:09) 

カオリ

>Shoさま
コメントありがとうございました。悲しみとの共生、正にそうかもしれません。無理に悲しみを克服しようと蓋をしてしまうと、いつか蓋はまた外れてしまい、より辛い状況に陥ってしまう・・・そんなかんじかもしれません。

心理学はほんとうに奥が深いですね。わたしは入り口で怖じ気づいています。Shoさんはいつも物事を深く妥協することなく考えていらっしゃるから、心理学を学ばれたい、というお話しを伺って「なるほど」と納得です。
Shoさんも体調にはお気をつけてくださいね。
by カオリ (2012-11-05 23:03) 

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