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「お家さん上・下」玉岡かおる(新潮社) [本]

珍しく図書館に行き(いつもはネットで予約した本を行政のサービスセンターで受け取ることがほとんどなので)書架をなんとなく眺めて手に取った本です。
本の存在は知っていて、今度ドラマ化されるというニュースも見たので。

お家さん〈上〉 (新潮文庫)

お家さん〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 玉岡 かおる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/08/28
メディア: 文庫
お家さん〈下〉 (新潮文庫)

お家さん〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: 玉岡 かおる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/08/28
  • メディア: 文庫






明治〜大正にかけて世界にその名を轟かせた財閥鈴木商店の女主人鈴木よねを描いたこの作品。
鈴木商店についてはかつて経営史の授業で学んだ記憶はありましたが、これほどまでの規模と勢いをもった会社(といっても、ずっと合名会社の個人商店のようなもので株式会社化されたのは大正12年。倒産の数年前です)が今はすっかりその姿を消してしまっているという事実に驚きました。
ただ、鈴木商店をルーツとする企業は今でも多数残っていて、神戸製鋼、帝人、日商岩井、IHIなどなどほんとうに多岐にわたっていています。

鈴木よねは急逝した夫の残した砂糖と樟脳を扱う問屋鈴木商会を跡継ぎ息子が社長になるまでのつなぎとして社長になります。実際の社業は番頭の金子直吉と柳田富士松の2人に任せ、巨大財閥のシンボルであるお家さん(関西で商家の女あるじを指す言葉だそう)として君臨します。
なので、真に商才があったのは大番頭の金子直吉だったのでしょうが、その商才を見抜き、店の経営を任せたよねの力と胆力なしには鈴木商店の発展はなかったのだと思います。

しかし、結局第一次世界大戦後の世界不況の波をもろかぶりし、借り入れに借り入れを重ねて事業資金としていたため、銀行から取引を着られた途端に倒産ということとなりました。

よねと直吉は銀行から示された会社の近代化による再建には首を縦に振らず、そうすると鈴木商店は鈴木商店でなくなってしまう、そんな鈴木商店には意味がないということで倒産の道を選びます。
いわゆる、株式会社の常識ではあり得ない選択。
「会社は誰のものか」という一昔前にブームになったテーマを思い出し、いろいろと考えさせられました。

国家予算が15億円の当時に、鈴木商店が銀行(主に台湾銀行)から借入れていた金額が5億円。途方もない金額です。何かと話題のソフトバンクの借入金なんて目じゃないです。
結局のところ、ビジネスはどんどん世界規模で大きくなり、その規模の大きさに旧来の勘と人情に頼る経営手法では対応できなくなってしまったというのが結末なんだろうと思います。
まぁそれもこれも今振り返るからこそそういうふうに感じてしまうんでしょうが・・・。

よねの覚悟と胆のふとさに読み終えてやはり感服しました。

ドラマはまだ放送日などの詳細は決まっていないようです。
よねが天海祐希、直吉が小栗旬だそうです。

「お家さん」

う〜む、なんだかちょっとイメージ違う・・・。でも楽しみにしています。

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コメント 2

Sho

この方の「天涯の船」を、もう十年くらい前に読みました。それがものすごく面白かったです。
多分、こういう一代記みたいのがお得意のように感じましたので、「お家さん」も読んでみたいです。
商売というのは、いろんな意味で、難しいのだろうなあと(なので同時に堪らなく面白いのだろうなあと)思います。
by Sho (2014-02-08 08:44) 

カオリ

>Shoさま
ここ最近は玉岡さんは女の一代記ものを主に書かれてるようですね。わたしもほんとに20年ぶりくらいに読んだのですが、上下巻の長さを飽きずに読ませる力量はすごいなと思いました。
ビジネスというより「商い」という言葉がその生業にぴったりの鈴木商店ですが、100年以上も前にこんな会社があったんだということに単純に驚きを隠せませんでした。
by カオリ (2014-02-10 20:58) 

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