「マチネの終わりに」平野啓一郎(毎日新聞出版) [本]
またもや不具合発生の我が家の車。今度はパワーウィンドウが壊れた・・・。
助手席の窓が閉まらなくなってしまったらしく、そのまま駐車場に駐めてます。機械式の駐車場でよかった。。。
- 作者: 平野 啓一郎
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2016/04/09
- メディア: 単行本
ずっと図書館で予約していて順番がようやくまわってきました!
評判がとてもよい作品だったので楽しみにしていたのです。
毎日新聞連載だったようですね。
10代の頃から天才ギタリストと評価され、活動してきたギタリストの蒔田。通信社記者で、パリに暮らす洋子。ふたりは偶然共通の知人を介して知り合い、恋に落ちる。しかし、東京を拠点に活動している蒔田は音楽的スランプ、洋子は2ヶ月のイラク取材を控えており、かつアメリカ人の婚約者もいた。でもふたりは惹かれあい・・・というストーリー。2006年の東京での出会いから2012年のニューヨークでの再会のラストシーンまで、6年という長い歳月のなか物語は進みます。
でも、このふたりなんと3回しか顔を合わせてないのですよ。あとはスカイプとメール。
そして登場する邪魔者。
エンターテイメント的恋愛ストーリーに散りばめられた、哲学的な要素に、芸術家とジャーナリストの恋愛という特別感が漂っていて、読んでいて充実感がありました。
ふたりが出会った宴席で「過去は変えられる」という話題があり、その後もこの「過去は変えられる」という言葉が要所要所で重要なものとなります。
時間が1分でも経てば、すでに過去。その場に居あわせた人それぞれの記憶の中の出来事になってしまう。
そしてその記憶を思い出すたびに、思い出は上書きされ、その時々の気持ちや気分、経験などが加わって、変化してきますよね。わたし的には良くない思い出の方が、どんどん上書きされ深化していく(さらに気分悪いかんじに)気がしますが、たぶんこの作品では、プラスの方向に変えられるよね、という意味。
角度を変えて考えてみるとか、後で起きた事象によって前向きな記憶になるとか。
洋子はイラクで遭遇したテロによって長いことPTSDに悩まされ、それがふたりの関係にもマイナスの影響を与えるのですが、これも過去の記憶がもたらす病なわけで・・・。
蒔田と洋子は6年間に起きた出来事をどんなふうに、消化し、ふたりの関係をどうしていくのか。
それは読者に委ねられていますが、うーん、どうなるのかな。わたしも今の時点ではなんとも言えないかな。
とにかく、読んでよかった、な1冊でした。